2021年のキング・クリムゾンを観た・聴いた
色々思い出す最後の夜#KingCrimson pic.twitter.com/7zisD4zqun
— GEN(げん) (@gen_meoto) December 28, 2021
あの感動からそろそろ1か月。公私に忙しく長文を書く気も起きなかったが、人生の備忘録として記しておこうと思う。
2018年の来日時には「メンバーがいつ死ぬかもわからない。後悔したくない」との思いがあった。そして実際に3年前の来日メンバーであるビル・リーフリンは昨年亡くなった。
そんな中、コロナ禍の中でのアメリカツアー開始の便り。そしてまさかの来日のニュース。ぴあでチケットをポチるマウスに躊躇はなかったw。1枚目、2枚目、追加公演で3枚目、4枚目。〆て64,000円。ああ、もっと高額の席でお布施したいのに・・・
それにしても、高齢なメンバーの健康状態は大丈夫なのか? 本当に入国できるのか? こちとら屋外のサッカー場や野球場すら入場制限があるというのに・・・
そんな不安はあったが、ツアー一行は無事来日し、隔離期間を厳格に過ごし、リハーサルが始まったという知らせも入ってきた。その一方で、プロモーターのwebサイトやメンバーのSNSからは「最後の来日」「クリムゾンとしての最後のツアー」「来年以降は全くの白紙」「Completion(=完結)」といったキーワードが続々と出て来る。ああ、ああ、、、、、、
初日。東京国際フォーラムのAホールというデカい箱。演奏者よりも我々聴衆の方が、このコロナ禍においては緊張感があったかもしれない。チケットもぎりと手荷物検査に加えて来場者情報シート(これが大変だった)と体温チェックと手指消毒が追加された入場時の運営は決してスムーズではなく、初日は(おそらく入場遅れによって)開演が遅れた。しかしそれがなんだというのか。この面倒な時期に来日を決意してくれたメンバーとツアースタッフ、関係機関とのネゴなどもあったと想像されるプロモーター、久しぶりの大人数イベントにもかかわらず日ごとに手際を改善していった会場スタッフには、クリムゾンの音楽に対する賛辞と同じくらいの感謝の念を表したいと思う。
本当にありがとうございました。
#KingCrimson
— GEN(げん) (@gen_meoto) November 27, 2021
ファン向けパフォありw
しかし腰抜けそうに凄かった…
(それにつけてもワイの無力なカメラよ…) pic.twitter.com/FBujYtZpA4
まさかの21CSMなし!#KingCrimson pic.twitter.com/XT9Udq5KEb
— GEN(げん) (@gen_meoto) November 28, 2021
クリムゾンは、やはりクリムゾンだった。日々、アップデートを発見する喜びがあった。
それは、"Neurotica"で日によってアップライトとスティックを使い分けるトニー・レヴィンのプレイであったり、"Indiscipline"のドラム掛け合いのお題出しが最終日だけギャビン・ハリスンだったり、"Schizoid Man"のドラムソロに「純正ソロ」「高速ドラムアンサンブルをアドオン」「←リムショット版」というバリエーションがあったり、"LTIA2"前に"EXILE"のノイズを入れてドキドキさせてみたり・・・と、予想内のセットリストの中で色々と仕込むエネルギーがあった。ジェレミー・ステイシーのフリーな感じのキーボードが彩る"Red"は過去最高だった。そしてまさかの"Schizoid Man"を演らない日もあるというイケズなところもバッチリ発揮してくれたw
そしてやはり、トリプルドラムは正義だ。大正義だ。とりわけ
"Radical Action II"や"LTIA5"は電子ドラムよりもこういったフィジカル編成がよく似合う。
過去のクリムゾンにおける、プレイヤー同士の触発で演奏が見るからに(聴くからに、と言うのが正しいのかな)ガリガリ変化していくような感覚。あるいは、1980年代に2本のギターとスティックが絡み合うことで生み出した複雑かつ立体的な構造を感じさせる三次元緊縛(なんだそれ)のような演奏。
現在のクリムゾンは、トリプルドラムによる6本の腕、6本(たまに12本)のスティック、6本の脚+ステイシーのキーボード同時弾きが、インタープレイと立体構造の両方を我々の耳にドカン! と大音量で届ける、そういう解釈を俺はしている。なので3人のドラマーが暴れれば暴れるほど俺の脳内ドーパミンは溢れだすこととなった。
ただし、ギャビン君。君のドラムの音は(特にキック)デカすぎるゾ。
ただの「記念に買ったぜ」ではないのです
— GEN(げん) (@gen_meoto) December 8, 2021
今日は一番壁側の席。後ろの方に迷惑を掛けず声も出さずに感謝の意を表すにはコレだ!
これを掲げるのだ!
(サッカー場のノリ……)#KingCrimson pic.twitter.com/gSs4iLT9lz
Onstage at 18.40, doors held for 10' to allow the audience to enter. A full house.
— Robert Fripp (@rfripp_official) December 8, 2021
The first set: one hour and three minutes. Overall length: 2 hours and 24 minutes.
KC’s final note of Starless, the last note of this Completion Tour in Japan, moved from sound to silence at 21.04. pic.twitter.com/aWrj5VO1qA
俺はロバート・フリップの「クリムゾンは完結するが次に何が始まるかはわからない」みたいな思わせぶりかつ勿体ぶった言い回しが本気で大嫌いで、そういう発言を目にするたびに「はまぐりに当たりやがれ」と思わないこともないが、それでも彼の口から「完結」という言葉が出た意味は極めて重い。それが過去に何度も言われた言葉であったとしても。
目の前のショーがキング・クリムゾンとしての最後のライブステージになる可能性が極めて高い、ということが頭の片隅によぎる(脳内ではフリップが日本語で俺にそれを告げている)瞬間はたびたびあり、そのたびにグレッグ・レイクやジョン・ウェットンがステージで歌っているようにも見えてくる。
そんな精神状態なのは俺だけではなかったらしく、オーチャードの1日目で隣のオッサンが「ウエットンのいるクリムゾンが観たかったですね・・・」と問わず語りにしみじみと語りだしたのには苦笑を禁じ得ず。しかし俺も「そんなの観ちゃったら思わず一緒に成仏しちゃいますよね・・・」と返したのは、本音だ。
こうなるとクリムゾンは俺にとってもはや宗教のようなもんだが、まあ1981年からバンドに在籍しているメンバーからしてそういう風に感じているんだから、それより前からクリムゾンを聴いている俺が、そんなおセンチになったっていいじゃないか。
俺がクリムゾンを最初に聴いたのは、たぶん"USA"。「こんな曲があるのか!」衝撃だった。家には"宮殿"もあった。所有者は俺の3つ上の姉だ。"Young Person's Guide"は売ってしまったと言っていた記憶があるので、たぶん1976年か77年、俺が11歳か12歳の時のことだ。
時は流れて2021年。俺は56歳。初めて聴いた時にはすでに解散していたバンドを、まさかこんなに長い期間「推し」として楽しめるなんて、思ってもみなかった。
もしかしてその幕引きの時が来たのだとしても、小難しい事ばかり言ってきたバンドが最終的に出した答えが"Music is our Friend"だとしたら、「うん、そうだね(フフッ)」って返したくなる、そんな2021年の日本公演でした。